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彼女は持っていなかったが、憤慨している様子も家にパテックのブードゥー人形があるようにも見えなかった。

しかし、ひとつだけ疑問の余地がないことがある。私はガイド女史に気に入られたかった。

プレキシガラスのゲートをくぐって美術館に入り、私は彼女にいくつか質問をした。彼女は通訳として働いていて、4ヵ国語を話すという。私は、1と3分の1ヵ国語を話すと答えた。時計は何をつけているのか。ボーム&メルシエだそうだ。パテック フィリップは持っているかと聞いた。彼女は持っていなかったが、憤慨している様子も家にパテックのブードゥー人形があるようにも見えなかった。もし私なら時計を案内する仕事をしていて時計を1本も支給されなかったとしたら、どうしたかわからない。

アントワーヌ・ノルベール・ド・パテックとアドリアン・フィリップの胸像の前で立ち止まると、彼女はパテックのビジネスセンスとフィリップの技術力(彼は、リューズで巻き上げとセッティングの両方を行う機構を発明したと思われる。それ以前は、それぞれの働きのために巻上げ機が必要だった)を熱っぽく語った。パテック(頬髯のお爺さんと私は呼ぼう)は鋭いまなざしで収益源を見抜くのに適しており、フィリップは繊細な芸術家の目で、これまた収益源を見抜くのに適したいるのだ。1844年のパリ万国博覧会で、ポーランド人のパテックとフランス人のフィリップが出会い、ペット・ショップ・ボーイズ(Pet Shop Boys)の曲『オポチュニティ』を即興でデュエットしている姿を想像した。「私は頭脳を、あなたは鍵のない巻き上げ機構を手に入れた、さあ大儲けしよう」と歌ったかも。この画期的な洞察は、素晴らしすぎるので秘密にしておこう。

ここは、パテック フィリップの工房があった場所に2001年にオープンした博物館だそうだ。私たちは工房を再現した部屋に入った。トラック照明があり、床は灰色の大理石でピカピカに磨かれていた。もし、作業員が私のように髪を乱していたらそれが映って恥ずかしくなるほどはっきり分かるだろう。右側はガラス張りのスペースで、ルーペをつけた男性がいた。短い灰色の髪はバンカーズランプの光で少し緑色になり、小さな真珠で飾られた金の懐中時計を修理しているところだった。


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